コウペンちゃん夢小説まとめ

・夢主ネームレス名前変換無しですが、公式の想定している「きみ」よりは自我があります
・恋愛要素はありませんが、コウペンちゃんのガチ夢女が書いているので思想は強めかもしれません


のんびりしてえら~い

 ちりりん、と微かな音が鳴る。十月も半ばになってようやく暑さが落ち着いてきた。夏の昼下がりなんてクーラーがなければ溶けてしまいそうで、とても窓を開けて風鈴の音を楽しむことなどできなかった。
「んしょ、んしょ……」
 さて、一息入れたし午後もお仕事頑張りますか……とノートPCのスリープを解除していると、ちいさな同居人が座布団を引きずってやってくる。
「コウペンちゃん」
「ぼくもここでお絵かきしていい~?」
「いいよ~」
「ありがとー!」
 勿論、いいに決まっている。ちいさい子は遊ぶのがお仕事だ。
 とてもうれしそうにローテーブルにスケッチブックとクレヨンを並べていくコウペンちゃん。その愛らしい姿に癒され、ずっと眺めていたいような名残惜しさを覚えつつも、わたしは暫し目の前の業務へと意識を集中させた。
 かたかた、そよそよ、ちりんちりん。
 どれくらい時間が経っただろう。かわいくていとおしいペンギンの赤ちゃんと過ごす沈黙は全く苦ではないが、ちょっと眠たくなってきたし、気分転換にラジオでも付けようかしら……とテーブルの向かい側を見遣れば。
「すよ……すよ……」
 何ともかわいらしい寝息が聞こえてきた。
 心地よい涼しさと、昼食後のお腹の具合を考えれば、眠ってしまうのも無理はない。寝室からブランケットと枕を持ってきて、まあるいお腹に掛けてあげたその流れのまま、わたしもごろんと転がった。仕事のキリも良かったし、許される許される。
「のんびりしてえら~い、だね」
「むにゃ……えら~い……」
 コウペンちゃんのスケッチブックにはキャンプを楽しむみんなたちの姿が描かれていた。すっかり秋の気配だ。
 お昼寝から目覚めたら、お出かけの提案をしてみようかな。


ふたりならぽーぽいね

 ごろごろ、ごろごろ、もふう……。
 ニ◯リで買った敷きパッドと羽毛布団が心地よすぎて、もう絶対に目覚めたくなかった。どうして冬の朝ってこんなに憂鬱なのか。寒いと気分が塞いで嫌なことばかり考えるから、よく眠れなくてスッキリ起きられやしない。
「疲れたなあ……」
「疲れちゃったの……?」
 独り言に応える声。一緒に暮らしているコウテイペンギンの赤ちゃんだ。また心配をかけてしまった。
「モヤモヤおあずかり、する?」
 この子の――コウペンちゃんのふしぎな力で、モヤモヤとかイライラとか不安とか、そういうのがスッと取り出されて、ふわふわの綿あめみたいに消えてしまうことは知っているけれど。
「……ううん。いいの。そんなものあずからなくていいから、ずーっとそばにいて」
 こんなちっちゃくてかわいらしい手に、痛いものを背負わせたくはない。わたしの苦しさはわたしだけのものだ。そう思えるようになったのは、もしかしたら愛というやつのおかげなのかも。
「わかったよ~」
「ありがとうね、コウペンちゃん」
「ぎゅーってしよ~」
 すっかり冬毛に生え変わった柔らかないのちをそっと抱きしめる。
 もう少しだけ二人で微睡んだら、目を覚まそう。お布団を出て、お弁当の準備をしてアイスをたびて。外に出て、そうして、今日を生きていくのだ。


優しさだけでできた夜

「すよ……すよ……」
「あらま。寝ちゃったか」
 集中しているにしても静かすぎるなあ、と思っていたら、膝の上からすこやかな寝息が聞こえてきた。スマートフォンのロック画面を確認すれば、時刻は夜の十時を回っている。たいへん、あかちゃんペンギンが起きていていい時間ではない。
 怪我をしてしまわないようにそっとふわふわの両手から編み針を抜き取る。二人で協力して編み進めたから、きっとクリスマスには間に合うはず。
「むにゃ……いつも、ありがと……」
 去年の冬に行った旅行。わた雪のように真っ白なお揃いの帽子を貰ったお返しのマフラーが、今年のみんなへのクリスマスプレゼントだ。
 アデリーさん、大人のペンギンさん、邪エナガちゃんの分は編み終わって、あとはシロクマさんの分が三割ほど。
 また明日から頑張ろうね、コウペンちゃん。


ほんわか帰り道

「おう、荷物全部持ってもらっちまって悪いな」
「いいのいいの。アデリーさんはコウペンちゃんのこと、しっかりおんぶしててあげて」
 朝には雪が降ったけれど、夕方の陽の長さに春の訪れを感じる。そんな日だった。
 その背にコウテイペンギンの雛を背負ったアデリーペンギンの成鳥と人間の大人――わたしは、川近くの道をゆっくりと歩いていく。
「いつものんびりみずまんじゅ……コウペンちゃんと遊んでくれてありがとな」
「ふふ、わたしが遊んでもらってるんだよ」
 すよすよと寝息を立てる赤ちゃんペンギンはどんな夢を見ているのだろう。
 夕飯のおでんをたびたら、聞いてみようかな。


おはぎさんとコウペンちゃん

これだけ夢じゃないです。
コウペンちゃんが喋るおはぎとお友達になるほのぼのハートフルストーリー。
みんなたち以外には何のこっちゃの前提ですが、アデリーさんは大人のペンギンさんのことを「ぼたもちさん」というあだ名で呼んでいます。
※おはぎ:和菓子の一種。mastodonサーバーkmy.blueの妖精?のような何か。
※ぼたもち:おはぎの別名。時期によって呼び方が変わるらしい。諸説あり。

 ある日、きれいなお花に心惹かれながら原っぱをお散歩していたコウペンちゃんは不思議な存在に出会いました。
「おおきいものだなあ……」
 それは大きな葉っぱのお皿に乗った、大きな大きなつぶあんときなこのおはぎでした。
「やあ」
「かわいいペンギンさん」
「!」
 何と、その一対のおはぎは言葉を発しました。
「こ、こんにちは! ぼく、コウペンちゃん」
「コウペンちゃん、よろしくね」
「私たちは、おはぎさんだよ」
「おはぎさん……!」
 なぜおはぎが喋るのかはわかりませんが、コウペンちゃんはおはぎさんたちとすぐに打ち解けることができました。コウペンちゃんは優しい優しいコウテイペンギンの赤ちゃんだからです。
 おはぎさんとお友達になったんだよ、とその日の夕食時に聞いたアデリーさんが、大人のペンギンさんを五度見したのはまた別の話です。