掌編まとめ① - 5/8

 

ゆめのあと
(CP0戦共闘→共倒れ心中エンド/遺体を発見してしまう後輩の船医たち)

「っ……駄目だ! 来るな、トニー屋……!」
 瓦礫の下から奇跡的に原型を留めて見つかった二人分の遺体を前に、ローは咄嗟に叫んでいた。
 勝利宣言から息をつく間もなく、動ける者は総出で生存者と遺体の捜索が行われた。医療の心得を持つ者たちを中心としたその中に、青い炎の翼がはためかなかった時点で嫌な予感はしていたのだ。
 確りと繋ぎ合わされた小指の先。
 彼らの誇りが刻まれた胸に焼き付いた弾痕にブレた形跡はなく、銃を握ったまま眠る男の腕にも抵抗による爪痕がない。
 覚悟の心中だったことは、他人であるローの目にも明らかだった。
「……トラ男」
「馬鹿、来るなと――」
「大丈夫。おれも医者だ……覚悟はできてるよ」
 制止を聞かず来てしまった同盟相手の船医は、想定よりも落ち着いた様子だった。この戦の最中にすら言葉を交わさなかった本当に赤の他人でしかないローとは違い、トニー・トニー・チョッパーは一時かの不死鳥と共闘したと聞いたが、取り乱す様子もない。
「へへ……よかったあ」
 ただ――ただ、こぼれ落ちそうなほど丸く見開かれた目から、とめどなく涙を溢れさせて。
「大好きな人と……一緒に生きられないのは、つらいもんなあ……」
 これでよかったのだと、死者の道行きを言祝ぐように下手くそな笑顔を作る姿は、あまりにもこの小さくも強い生き物に似合わなかった。失意か、或いは苛立ちか、形容しがたい感情がローの胸を蝕む。
 ――なあ、大先輩。アンタも医者だろ。二人とも助かる道はなかったのか。後進にこんな顔させんのが大海賊の生き様ってやつなのか。
 胸中で零した恨み言に、答える声はなく。
 痛ましい結末の前にも平等に、夜明けが訪れようとしていた。